産学連携ブーム到来!知的財産は誰のものか?

日本における大学と企業の共同研究は経済産業省の旗振りもあって、2004年には10,000件に到達する勢いだった。しかし、最近、千葉大学京都大学など日本の大学が相次いで知的財産を巡って企業ともめているという気になる記事が日経新聞朝刊に出ていた。
大学は「企業は大学の力をもっと正当に評価すべきだ」と主張し、企業は「大学はもっと役に立つ研究をすべきだ」とやり返す。そしていざ何かが形になると、企業は「大学と共同研究を進める前から既に完成していた」というケースも多いそうだが、実際に大学がどこまで貢献したかというのを計るのは難しいだろう。
長年にわたって、企業は研究コストを圧縮するために、大学を一種の下請機関として使ってきた嫌いがある。見方を変えれば、マーケットから離れた基礎研究はビジネス的な評価を受けにくかったということかもしれないし、大学経営も余裕があったのかもしれない。
しかし企業と大学を取り巻く環境は変化した。企業は大学が保有する最先端技術をいち早く取り込んで事業化し、新しい市場を取り込んでいかないと継続的に成長することが難しくなった。一方、大学も少子化による全入時代を控え、特許などで研究力を誇示して、大学間の熾烈な競争を勝ち抜いていかなければならない。
最近は、産学連携において20年も先を行っている米国の企業が、米国の有力大学より取り組みやすい日本の大学にアプローチするケースが増えているのだそうだ。先日、マイクロソフトが日本の6大学(東京大学東京工業大学大阪大学京都大学早稲田大学慶應義塾大学)と研究機関を設立するという報道もあった。
知的財産は成果が出る前提で共同研究を始める前に議論されるべきだ。知的財産は成果が出てから考えよう、なんて悠長なことを言っていると、日本の有力大学の貴重な研究開発能力が海外に流出し、ひいては日本の競争力の低下を招きかねない。大学は企業にとって下請けではない。大切なパートナーであるはずだ。