小泉総理は優れたマーケッターだ!

小泉自民党が岡田民主党に対して圧倒的な勝利をおさめた。今回の選挙戦はPR会社の戦いという一面を持っているが、PR戦略の最終的な意思決定者はあくまでも小泉総理その人である。
優れたマーケッターは、ターゲット(誰に伝えるか?)、表現コンセプト(その商品の何を伝えるか?)、アピールポイント(その商品が持っているどのメリットを確信させるか?)、キャッチフレーズ(そのメリットを強調するキーワード)など、PR戦略を明快かつシンプルに整理することができる。
今回のターゲットは大半は事情に精通していない国民、すなわち、一般消費者である。商品は小泉自民党。表現コンセプトとアピールポイントは、①自民党は公約通り改革を進める。②郵政民営化は改革の第一歩。(郵政民営化ができなくて何ができる?)③郵政民営化=小さな政府→脱役人天国(役人の既得権を許すな!)となり、自民党=改革=郵政民営化という図式ができた。ターゲットである国民にとってのメリットは、①郵貯簡保340兆円が民間に流入する。②税収がアップする。③郵便局ネットワークは維持される。であり、メリットはあってもデメリットはないように思える。キャッチフレーズはもちろん「郵政民営化」であり「郵政解散」。
「商品」というものは、商品の提供者にとっては、「言いたいこと」が山ほどあるというのが世の常である。優秀なマーケッターはその山ほどある「言いたいこと」を幹と枝に分けて、涙をのんで大胆に削ぎ落とす。これができるかできないかが勝負の分かれ目であり、小泉総理はこれを見事にやってのけた。全てを伝えきれないリスクより、欲張りすぎて何も伝わらないというリスクの方が圧倒的に大きいのだ。一方の岡田民主党は最初から最後まで、小泉自民党を批判したいということ以外に表現コンセプトが伝わってこなかったし、挙句の果てには表現コンセプトを伝えることをあきらめ、「マニフェストに全て書いてある。マニフェストを読んでくれ!」と吼えた。これをビジネスに翻訳すると、「俺のセールストークがわからないなら、カタログを読んでくれ!」となる。そんな不親切なコミュニケーションが通ると思っているのか?こんな調子では小泉自民党を倒すどころか、国民に見放されても無理はない。
今回の選挙戦は、PR戦略も含めて、小泉自民党が圧勝した。後は約束したことをどこまで形にできるかが大切である。実行できなければ信頼を失う。そして一度失った信頼を回復するのはとても難しい。これは政治もビジネスも一緒である。と言いたいところだが、ライバルの民主党がこんな調子では小泉自民党は今後も楽勝なのではないか、どんな業界でも競合がひしめくビジネスの方がよっぽどシビアだ、と思うのは私だけだろうか。前原氏率いる新民主党に奮起を促したい。